since 2005年8月12日
汗と精液の臭いがして薄く目を開いた。目の前には壁とパイプベッドのパイプ。それに窓からの痛い位の日差し。何時だか見当もつかない。そして、自分の体を抱く骨と筋張った腕。…頭に過ったのは黒髪と細い目、金髪と細い目。どちらも捕食者よろしく欲に溺れた目を向けている。この腕はどちらのものでしょう。答えなんてぱっと出てきてるなら苦労していない。
「…久保ちゃん」
「そうだよ、」
答えた声は掠れていた。昨日の夜、ここに来る前。のし掛かるようにベッドに押し付けられ、噛まれた首の裏。うなじってやつ?そこを鼻先が擽って、口づけてから、歯を立てられる。体が反射的にびくりと震えてぞわぞわと背骨に落ち、腰を痺れさせる。
「…ウソツキ」
確認するように呼んだ名前の主と同じ事をする別人は楽しそうに舌を伸ばす。一つ一つ、自分の歯形を確認するように。一つ一つ、久保ちゃんの歯形を消すように。なぞり終えたソコに唇を押し付けたまま、楽しそうに笑った。
「猫は交尾するとき、逃げられないようにここに噛みつくんだってさ」
キミの事、やっぱりかわいいかわいい猫だとでも思ってるんじゃない?そう笑う指は足に触れ、次は腹。熱と欲を孕んだ指先は汚れた肌をなぞって、引っ掻く。性器に成り下がった排泄器官は安易に指を受け入れる。
「時任、」
わざとらしく呼ばれたのは拾った猫のように付けられた名前。アンタ、そんな呼び方しねぇじゃん。指を押し込まれる。苦しくて息が詰まる。引き抜かれ、広げられる。はっはって息が上がって、女の気持ちが少しだけわかる瞬間。男だって事実を捨てる瞬間。屈辱と快感で頭が可笑しくなりそう。うなじの皮膚が破ける感覚。歯を立てられて、塗りつぶされていく。わざとらしく、アイツみたいに呼ぶ声。そんなんで興奮すると思った?
「なぁ滝さん」
振り返ると日差しで輝く汚い金髪。手を伸ばし首を捕まえて腕を絡めた。そんな名前で呼ぶなよ。そんなんじゃ感じない。誘うならこうやって、
「目を見て、呼べよ。」
俺の名前を。
俺を見る、欲に溺れた細い目が、どっかの誰かに似ていた。
end?
ななお様/pixiv