晩夏

うとうとと、眠りに落ちる寸前の心地よさに微睡んでいると、不意に乾いた掌がそっと頬に触れた。
じっと見下ろされてる、その視線だけを感じて無意識に身体を固くした、その瞬間。
手は頬に触れたまま、親指だけでゆっくりと唇をなぞられた。

「くぼちゃ、」
「ごめんね」

思わず目を開けて見上げた久保ちゃんは少しだけ困った顔をして。
迷うように触れて、離れた手がためらう様にもう一度頬に触れて。
温もりが消えそうになった瞬間、その手を掴んだ。

「時任?」
「いいから」

体温が低くて、存外に心地がいい久保ちゃんの手に頬を乗せて目を瞑る。

「しばらくこうしてろ」
「うん……」

空いた方の手で髪を梳かせながら、何処か夏の終わりを感じさせる夜の気配に耳を塞いだ。