since 2005年8月12日
大事で大事なヒロイモノ。
初めて手にした自分の意思を持つイキモノへの接し方は、なかなかどうしてか難しく。
「時任?」
最近になってようやく呼び慣れた、その名前。
呼ばれた方も聞き慣れたその音に反応するように、ベッドの山がモゾリと動く。
「どうした?具合悪いか?」
「いや、べつに……大丈夫」
「……そう」
拒絶を含んだ声色に、何も言えないまま扉を閉める。
踏み込みたいのに、踏み込めない。
触れたいのに、触れられない。
触れ方が分からない。
計り兼ねる距離感に、もどかしさばかりが募った。