局所的豪雨注意報

通り雨が過ぎれば真夏の日差しは午後になっても衰える事を知らない。
東湖畔を一歩外に出た所で濡れたアスファルトから照り返す光に目を細めれば。

「久保ちゃん!」

耳慣れた声に視線を移すと、時任が傘を二本揺らしながら何処か不機嫌な面持ちで駆け寄ってきた。

「傘、持ってけっつったじゃん」
「あーごめん。忘れてた」
「忘れてた、じゃねーよ。人がせっかく持ってきてやったのに」
「雨、上がっちゃったね」
「無駄足じゃねーか」
「そんな事無いと思うけど」

時任の手から自分の傘、それから時任本人の傘も受け取り、ふと気付く。

「ねえ、家の方も雨降ってた?」
「ったり前だろ。だからわざわざ迎えに来てやったんじゃん」
「うん、そーだよね……ありがとね?」

左腕に濡れた形跡どころか開いた形跡すら無い傘をぶら下げながら、右手に時任の指先を絡げた。