寝ても覚めても

寝起きは良い方だが、それが必要な睡眠時間を得た事に依るものかと問われれば、決してそういう訳でも無く。

「ってぇー!」

寝室の方から音の割には派手な叫び声。
目が覚めると同時に苦笑が浮かぶ。
ソファーから起きあがり寝室のドアを開けると、予想に違わぬ光景がそこにはあった。

「……大丈夫?」
「じゃねーよ。腰打った」
「あらら」

ベッドから落ちたらしい時任が、床に転がったまま恨みまがしく俺を見上げる。

「いま何時?」
「まだ5時前」
「何でそんな時間に起きてんだよ……」
「いや、寝てたよ?ソファーで」

訝しげな視線を向ける時任を取り敢えず助け起こし、ベッドに座らせる。

「だって煙草吸いに行って戻ったらお前、もう真ん中に寝てるんだもん。起こしたら怒られそうだし?」
「んなもん、俺が起きないように隣りに潜り込め。でもって縮こまってでも寝ろ」

尊大な態度での要求は無茶苦茶な様で、分かりやすい時任の言葉に浮かぶ笑みをそのままに、その目を覗き込む。

「そんなに俺と離れて寝るの嫌?」
「な、ちっげーよ!久保ちゃんが隣りに居れば俺が落ちなかっただろ!?」
「本当にそれだけかなー」
「それだけだよ!それ以上も以下もねーのっ!」

からかいを含んだ俺の視線を無理矢理避けるように、時任はベッドに潜り込んだ。