false&false

玄関のドアを開ければ、そこに久保田が待っていた。

「おかえり」
「何してんだよ、こんなとこで」
「時任こそ。こんな時間まで何してたのかなーもう2時なんだけど」
「電話したじゃん」
「滝さんの家に居るから、だっけ?俺が聞いてるのは何処に居たかじゃなくて、何してたのかなんだけど」

答えるまで部屋に通す気は無いらしい。
微妙に通路を塞ぐ位置に立つ久保田に苛立ちを覚えながら、

「滝さんとセックスしてた。そう言えば満足なのかよ」

吐き捨てた瞬間、だん、と壁に激しく背中を打ち付けられた。
強い衝撃に息が詰まる。

「それ本気で言ってんの?」
「……なんて、冗談に決まってんだろ?」
「本当に?」
「本当に。俺の言う事が信用出来ないのかよ久保ちゃん」
「ううん、そんな事ないよ。ごめんね、痛かった?」

抱き寄せられて、回された腕に打ち付けた背中を撫でられる。
つい今しがたシャワーを浴びて来たかのような湿り気を帯びた髪と、それに至る経緯については触れられる事も無かった。