since 2005年8月12日
「時任、起きて」
せっかく心地いい眠りの中に居た俺を強制的に目覚めさせたのは、久保ちゃんの無粋な一言。
チラリとだけ視線を向けて無視を決め込めば。
「うーん、しょうがないなー」
諦めたか?
ホッとして気を抜いたその瞬間―
「久保ちゃん!俺の布団ー」
「寝かせておいてあげたいのは山々なんだけどね、シーツ洗っちゃいたいから」
「んなの、後でいいじゃん……」
掛け布団は取り上げられたまま枕にギュッとしがみ付いて、ここから動きませんアピール。
「ほら時任。寝るなら、あっち」
しがみ付いてた枕ごとごろりと向きを変えられて、そのまま持ち上げられる。
うわ、何だこれ。
「久保ちゃんの下手くそ!下ろせよ!!」
「こら暴れないの。落とすよ?」
さらりと怖い事を言う久保ちゃんに足をバタ付かせるのを止めると、出来損ないのお姫様抱っこ状態のまま連れて行かれた先は、リビングのソファー。
「ここでなら好きなだけ寝てていいから」
「……俺様デリケートだからこんな固いソファーじゃ寝れない」
「はいはい。ゲームやりながら床では寝れてもソファーでは寝れない訳ね」
久保ちゃんの言葉にうっ、と詰まると、久保ちゃんは笑ってさっき取り上げられた布団を持ってきてくれた。
「もういい、何か寝る気失せた。起きてる」
「そう?じゃあ、この布団も干しちゃおっかなー」
「ああもう、勝手にしろ」
「はいはい。勝手ついでに枕カバーも洗っちゃうからそれ貸して?」
俺はいつの間にか抱き枕と化してたそれを、久保ちゃんに向かって思いっきり投げ付けた。