since 2005年8月12日
酷く嫌な夢を見た。
目が覚めてその内容こそ覚えてはいないものの、ただ酷い夢を見た、という不安感だけは拭えない。
あまりにも余韻が強すぎて、いま再び眠ったとしても夢の続きを見てしまいそうな気さえした。
夢を見るのが嫌ならば、このまま眠らなければいい。
そう思いもしたが、まだ残る眠気とすぐ隣の慣れ親しんだ体温がそうさせてはくれない。
心地よさに引き込まれるように再び目を閉じようとした時、不意に時任が身じろぎゆっくりと目を開けた。
「あれ、久保ちゃん……?」
「ごめんね、もしかして起こした?」
「いや……むしろ俺が起こしたのかと思った……」
そう言ってぎゅっと抱きついてくる。
甘えるように首元に額を押し付ける時任を両腕で抱き寄せれば、ただでさえ近い距離がさらに縮まり、不意に時任が小さく笑みを零した。
「どうした?」
「んーなんか嫌な夢みた気がするんだけど。久保ちゃんの顔見たら安心した」
「そう」
「つーか、久保ちゃんは何で起きてたんだよ」
「お前と同じ」
「そっか。もしかして同じ夢だったりしたら笑えるよな」
同じ夢。
もし本当にそうだったとして、それを笑えるという時任の言葉にもう不安は感じない。
「なんかさ、このまま寝たらまた変な夢見そうな気がしねえ?」
「んーじゃあ、このまま一緒に起きてよっか」
「起きてよかって、まだ真夜中じゃん。俺ぜってー寝るんだけど」
「大丈夫大丈夫、俺が寝かさないから。ね?」
不思議そうに見上げる時任に口付を落とせば。
意図を汲んだ時任の瞳に挑発的な光が宿った。