ゲームオーバー

慣れたはずの煙草の煙に咽た。
意地でラスボスまで漕ぎ付けたゲームも何処となく上の空。
ふと隣りに感じた、慣れた気配。

「時任」
「なに久保ちゃ、冷たっ」

思わずコントローラーを取り落とした。
指先で確かめた、首の左側には冷たいシート。
反対側にも貼られて、冷たさに肩が竦む。

「なにコレ」

ていうか、なんで。
見上げた久保ちゃんは、何となく困り顔。

「うーん、気付いてないなら知らない方がいいと思うけど」

久保ちゃんがちらりと向けた視線の先。
釣られて見た先のテレビ画面にはゲームオーバーの文字。
終わったならいっか、そう呟く声もやけに遠い。
止める間もなく電源が落とされる。

「とりあえずね、お前は寝てなさい」

額に触れた、久保ちゃんの手。
心地良さに目を閉じた瞬間、急に身体が熱くなった気がした。