sleepless night

風呂上がり。
生乾きの髪をタオルで拭きながらリビングに戻れば、散らかっていたゲームやペットボトルが片付けられ、久し振りの静寂に包まれていた。

「今日はもう寝てるかな」

徹夜で三日間やり込んだゲームを漸くクリアして、顔色悪くしながらも満足げな表情で先に風呂に入った時任は流石に俺を待ってはいられないだろう。
そう予想立てながら寝室のドアを開け足を踏み入れた瞬間、温まった身体がひんやりと冷たい空気に晒された。

「時任?」

暑さも寒さも極端に嫌う時任が、暖房も付けないで寝るなんて珍しい。
それともまだ起きてるのかとベッドに近付けば、背を向けていた時任が「久保ちゃん、」と眠気混じりの小さな声と共にごろりと寝返りを打った。

「暖房も付けないでどうしたの?お前、冷たいよ?」

せっかく風呂に入ったのに。
ベッドの端に腰を下ろしながら時任の頬に触れ、これ以上身体が冷える前にと暖房のリモコンに手を伸ばせば、手袋に隠されていない右手に手首を掴まれ、阻まれる。
そのままぐい、と引き寄せられれば、不安定な姿勢だった俺は簡単に時任の上に崩れ落ちた。

「……いいの?付けなくて」
「久保ちゃんにあっためさせてやろうかと」

でも久保ちゃん遅いから俺、本気で寝る所だった。
悪戯っぽく囁き口付けを強請る唇に応えながら、時任を寝かし付けるのも楽じゃない、と笑った。