since 2005年8月12日
目が覚めたら、時任が居なかった。
何も信じてなかった頃とは違って、今は時任の姿が見えない位でいちいちマイナス思考のループに落っこちたりなんかしないけど。
「……何処行ったんだろうね」
時計を見上げれば、まだ5時を過ぎたかどうかってところ。
出掛けるにしては少し早すぎるんじゃないの?
やっぱりざわざわと落ち着かない気を紛らわせる為に、リビングの暖房を入れて。
お湯も沸かしてコーヒーを淹れる準備までした所で、玄関の方から控えめな物音。
静まりかえった部屋に消しきれてない足音が響く。
「あ、久保ちゃん起きてたんだ」
「お帰り。こんな早くから何処行ってたの?」
「煙草。昨日、寝る前に無くなったって言ってただろ?」
目が覚めたから、買ってきた。
そう笑いながらコンビニの袋を差し出す時任を、何も言えずに抱き寄せる。
「久保ちゃん、あったけー」
「お前が冷た過ぎるんだって」
うっとりと呟きながら体重を預けてくる時任を抱く腕にそっと力を込める。
冷たい空気を孕んだ髪に頬を埋めれば、抜け落ちてた何かが満たされて。
「コーヒー、淹れよっか」
「おう。久保ちゃんが作ってくれたのが飲みたい」
「はいはい。でもその前に一本だけ吸わせてね」
正直、煙草が無かった事にも気付かなかったなんて。
―やっぱり手放せやしないよね。