early days

あたたかい。
うつらうつらとする意識の中で布団に包まっただけでは味わえない心地よさ、
例えば誰かの体温に包まれたような、って。

「久保ちゃん!?」
「おはよ」

今までに無い至近距離で微笑まれて、一気に目が覚める。
何で一緒に寝てんの、とか何で俺が久保ちゃんに抱きしめられてんの、とか。
そんな事よりも。

「久保ちゃん、どっか怪我とかしてないか!?」
「ん?全然。何ともないよ」

ほら、と寝転がったまま見せられた久保ちゃんの腕には確かに引っ掻き傷一つ無かった。

「ね、何ともないでしょ?」
「久保ちゃん、イロイロ無防備すぎ。ケーカイ心無さ過ぎ」
「ん?」

何が?と首を傾げる久保ちゃんに思わず溜息が洩れる。

「普段はともかく、寝る時は俺手袋してねーじゃん。だから不用意に近付かないで欲しいっつーか、」

そもそも何で久保ちゃんが同じベッドで一緒に寝てたんだ。
真っ先に問うべき疑問が久保ちゃんの言葉によって打ち消される。

「大丈夫大丈夫、時任は意外と寝相はいいから」
「……は?」
「んー、だからね」

久保ちゃんは悪戯が見つかった子供みたいな、ちょっとだけ困った顔をして。

「今日みたいな寒い日なんかは何度かこうやって一緒に寝てたんだけど。お前が心配してるような事は一度も無かったから」

一度も無かったって。
そもそも、久保ちゃんに対してあれだけ警戒心剥き出しにしてた俺が全然気付かなかったって。

「だから時任はもっと自分に自信持ってもいいんじゃないかなーなんて」
「……久保ちゃん、もうちょいそっち詰めて」
「あれ、バレたらてっきり追い出されるかと思ってたんだけど」
「うるせ。久保ちゃんこそもっと自信持てよ」
「なんの自信?」
「……俺から信頼されてる自信」

自分で言って、ちょっとだけ熱くなった顔を隠すようにさっさと久保ちゃんの胸の辺りに頭を押し付けた。