プレゼント

「えっと、どうしたのコレ」

これ、と呼ぶにはあまりにも数が多いプリンの山を眺め、久保田はさり気なく持っていたビニールの袋を後ろ手に隠すように持ち替える。

「買ってきた」
「何でまた」
時任は普段あまり甘いものは食べない。
嵌まればそれこそ店の在庫を買い占める勢いで買って来る事もあるが、今の所プリンに嵌まっている様子は無い。
にも拘わらず、このテーブルの一角に築き上げられたかぼちゃのプリンに、久保田は首を傾げた。

「久保ちゃんに嫌がらせという名のプレゼント」
「……それは喜ぶべき所なの?」
「当然だろ。だって俺様からのプレゼントなんだぜ?」

嬉しいだろ、と無表情に紡ぐ時任に曖昧な微笑みを返しながら、内心で「どうしたものか」と考える。

「どうせ久保ちゃんも買ってきたんだろ?」
「……何の事?」
「惚けんなよ。さっきから後ろで何か隠してるくせに」

時任の言葉に、久保田は黙って隠していたビニール袋を時任に差し出す。
受け取った時任は中身を確認する様に袋を覗き込むと「やっぱりな」と小さく呟いた。

「何で一人分しか買ってねーんだよ」
「だってお前、そんなに甘い物好きじゃないでしょ?」

ていうか、むしろ嫌な顔されそうだし。
言葉にはしなかったが、時任には伝わった様で「俺は久保ちゃんのそーいう所が嫌いだ」と不機嫌を滲ませた声で言う。

「……ハロウィンだから良いんだよ」
「何それ」

時任の理屈に思わず笑えば、時任は赤くなりながらも不機嫌な表情を崩さないまま、自分の築き上げた山の上にまた新たな山を築き上げた。