since 2005年8月12日
真夜中、不意にベッドのスプリングがギシリと音を発てる。
元々眠りの浅かった久保田はそれだけで簡単に目が覚めたが、敢えて目を閉じたままで
いると、今度は腰の辺りに慣れ親しんだ重みが掛かる。
それでもまだ目を閉じたままでいると、夜通し付けっ放しの冷房に冷えた時任の掌が頬に
触れた。
反射的にピクリと震えた瞼に、時任が笑むのを気配で感じる。
恐らく久保田の狸寝入りに気付いているであろう時任は、それでも何も言わずに、同じく
冷えた唇を久保田のそれに重ねた。
軽く触れていたかと思えば、今度は深く口付け、僅かに生じた隙間から熱を持った舌を
絡ませる。
―ここまで積極的なのも珍しい。
このまま寝たふりを続けて時任が何処まで手を出してくるのかも気になったが、そんな
久保田の思惑を見透かしたかのように時任が「やっぱ止めよっかなー」と呟いた所で、
漸く久保田は閉じ続けていた目を開けた。
「……こんな夜中にどうしたの?」
暗がりの中、合わせられた視線。
時任は紅い唇に妖艶な笑みを浮かべると、両腕をギュッと久保田の首に絡ませた。
「久保ちゃん、しよ?」
耳元で囁かれた時任の魅惑的な台詞に久保田はそっと微笑むと、了承の合図の代わりに
エアコンの設定温度を更に少しだけ下げた。