my servant

浴室の光源が暗闇に慣れた目に眩しい。
目を細めこめかみに響く鈍痛をやり過ごすと、改めて鏡に映る自分の姿に顔を顰める。

「まーたこんなに残しやがって……」

そこには無数の赤く小さな鬱血痕。
薄着になりつつあるこの季節、シャツで隠せる部分はともかく、首筋や耳の側にまで 付けられた痣は行われた情事をあからさまに物語っている。
後の『ご褒美』を条件に、久保田に焼かせた数々の世話。
面倒臭そうでいて、その一つ一つはどれを取っても時任が求める以上に丁寧だった事に 気を良くした自分が久保田に対し、「好きにしろ」と言ってやった結果がコレだ。

「やっぱ、甘やかしたのは失敗だったか」

予想していたよりも多かった久保田の痕跡に改めてぼやく。

「ていうか明日って、確か滝さんと会う日じゃなかったっけ……」

鋭い滝沢の事だ。
二人の間柄を知らない程浅い付き合いでも無いし、知った所で気にも留めずに絡んで くるような性格だ。
絶対に冷やかされるに決まっている。

「久保ちゃんには、後でお仕置き」

―もう今日は朝まで寝かしてやんない。

『my lord』→『my servant』