my lord

「あっつ……」
「時任、クーラー入れて」
「やだ。久保ちゃんが入れろ」
「時任のがリモコン近いんだけど」
「俺様誰かの所為で動くのしんどい」
「……」
「……」

そして暫く続く無言の戦い。
結局圧力に負けたのは久保田だった。
時任の上に伏せていた身体を退けると、腕を伸ばし手探りでリモコンを探る。

「寒っ」

部屋に満ち始めた冷気が汗ばんだ肌に直接当たり、体温が急激に奪われる。

「久保ちゃん、掛け布団直して」
「お前ね、人使い荒すぎ」
「何だよ文句あんのか」
「いいえ。とんでも御座いません女王様」

久保田はそう言ってベッドの足元で蹴り固められていた布団を足先で器用に手元に 引き上げると、時任の両肩までをゆっくりと覆う。

「これで宜しいでしょうか女王さま?」
「ん、上出来」

時任は満足そうに笑うと、久保田の頭をよしよしと撫でた。

「でさ、久保ちゃん」
「何?」
「上出来ついでに、ポカリ持ってきて」
「別にいいけど。ただで?」

久保田がわざとらしく拗ねた物言いをすると、時任は色っぽい笑みを唇に乗せて笑う。

「ご褒美は久保ちゃんが持って来てくれてから」

時任は久保田の女王様。