dawn

訳もなく突然、目が覚めた。
カーテンの隙間から僅かに覗く空がまだ白み始めてすらいない事と、シャワーを浴びてから 再びベッドに潜り込んだ久保田が変わらず隣で眠っている事から、起きるにはまだ早い時間 であると知る。

―朝ですら無いのなら、まだ寝ていればいい。

そう思って再び目を閉じるも完全に目が覚めてしまっているのか、ちっとも微睡む気配が無く、 早々に二度寝を諦める。
そうすると今度は隣で一人まだ気持ちよさそうに静かな寝息を立てる久保田に、腹立たしさ にも似た感情を抱く。

―自分だけ気持ちよさそうに寝やがって。

ムカつく。
ベッドの中でもぞもぞと体勢を変え、眼下に久保田を見据える。
その時タイミング良く寝返りを打って横を向いた久保田に笑みを浮かべると、眼前に晒された 頬に唇を寄せる。
軽く口付けてから顎先へと唇を滑らし、頤から耳への輪郭を辿るようにゆっくりと舐め上げた。
最後に行きついた耳朶には軽く歯を当て、ゆっくりと力を込める。

「ん……、」

久保田が身動ぎ、ゆっくりと目を開ける。

「時任……?」
「おはよ、久保ちゃん」
「おはよって……まだ夜明け前じゃない……」

時任と同じようにカーテンの隙間から空を見上げた久保田が目を瞬かせる。

「俺、まだ眠いんだけど……」
「俺は眠く無いもん」

そう言って時任は久保田の文句を封じるようにその唇に口付けると、甘えるように久保田の 首筋に額を埋めた。

「それで?無理に俺を起こして、何がしたいわけ?」
「さぁな。何して欲しい?」

久保田の問いに時任は甘える仕草はそのままに、クスリと笑った。