after

「ん……、」

小さく呻いて時任が身じろぐ。

「起きた?」

言われて久保田の上に伏せていた時任が少しだけ身体を起こすと、目が合った久保田に微笑まれ、乱れた髪を整えるように撫でられた。

「あれ、俺寝てた?」
「ちょっとだけね」
「そっか」

二人して激しく乱れた息を整えている内に、どうやら時任だけが意識を飛ばしてしまっていたらしい。

「目が覚めたなら風呂、入ってくれば?」

多分スゴイ事になってるから、という久保田の苦笑交じりの言葉に、時任は上半身を起こし改めて自分の身体を見下すと

「うわ、最悪……」

一言呟いて溜息を漏らした。

「ね?」
「ね、じゃねーよ。誰の所為だし」
「えー、自業自得っしょ」

情事後の余韻を残す中で交わすには似つかわしくない軽口が、却って心地良い。
浴室へ向かうためベッドの下で丸まっているバスタオルを拾い上げると、視界の端で煙草を銜えた久保田の姿を捉え、火をつけるよりも先にライターを奪ってしまう。

「寝煙草は禁止」
「いいじゃない、事後の一服」
「だーめ。お前、俺が風呂入ってる間に絶対寝そうだし」

時任は久保田の口から煙草を抜き去ると、代わりに自分の顔を近付け口付る。

「久保ちゃんは、コレで我慢」

濡れた唇を軽く舐め上げて笑った。