since 2005年8月12日
火を付けてまだ間も無い煙草を取り上げられた。
灰皿に押し付けられるのを見ながら、そういえば最後の一本だったっけ、と頭の片隅で思ったそれは時任のキスによって塗り潰された。
ソファーに乗り上げた時任の戯れるようなキスは唇から頬、耳朶へと場所を変えては緩やかに触れる。
上目遣いで覗き込む物言いたげな瞳に気が付きながら、悪戯心に笑いかける。
「煙草。買いに行ってきてもいい?」
「俺様の誘いより煙草を取るとは、いい度胸じゃねーか」
首に絡げられた腕に力が込められる。
割られたシャツの襟元に顔を埋めたかと思えば、首筋に覚えのある甘い痛み。
「痛いよ、時任」
「これで外に行けなくなっただろ」
小悪魔のような表情で笑いながら指先で触れるそこには、恐らく見慣れた赤い痕が残されたに違いない。
「時任、俺の負け」
離れかけていた時任の背に腕を回し、自分へと引き寄せる。
「後でベッドで仕返しだからね」
耳元で囁かれた睦言に、時任は愉しげな笑みを浮かべた。