禁止令

覆い被さり貪るように口付けていた唇を放すと、蕩けきった視線が時任を追った。
眼鏡越しじゃない久保田の瞳が快楽に染まるのを間近で眺め、この上ない愉悦に浸る。
さっきまでは時任が艶かしく前後運動を繰り返していた。
時任は久保田を跨いだその姿勢のまま、今度は収めきったその場所に力を込める。

「時任……」
「なに?」

歪められた唇から低い呻きと吐息が漏れる。
どんな時でも乱れる事の無い久保田が自分にだけ見せる、余裕の削がれた顔が好きだった。
寄せた耳元で途切れ途切れに囁かれた懇願とも取れる久保田の要求に、時任は満面の笑みを浮かべ、

「だめ。今夜はお前、動くの禁止」

―ついでに、勝手にイくのも禁止。
触れようとした手はその腕ごとシーツに縫い留められた。