since 2005年8月12日
靴音を反響させながら階段を上りきり、玄関の前で立ち止まる。
時刻は零時を少し過ぎたところ。
この時間なら時任もまだ起きてるだろうが、寝ていることも考えて自分で鍵を開ける。
「ただいまー」
「おかえり、久保ちゃん」
機嫌がいいのかな。
ソファーに座ると、最近お気に入りのゲームを中断して、時任がコーヒーを淹れて渡してくれた。
日中はまだ軽装で過ごせるような陽気でも、夜にもなればさすがに冷え込んでくる。
熱いコーヒーが思いの外冷えていた体に染み渡る気がした。
「なぁ、久保ちゃん。今日ってハロウィンだろ?」
「ん?ああ、日付変わってるからね」
しなやかな両腕が首に絡みつく。
ソファーに座る久保田の足を跨ぐ様に、膝の上に時任が座り込んだ。
「時任?」
反射的に細い腰を支えた久保田を見下ろした時任が、にやりと笑う。
「血ぃ寄越せ」
「……普通は悪戯かお菓子か?って迫られるもんなんだけどね」
「じゃあ久保ちゃん寄越せ」
「俺はお菓子?」
「嫌なら俺様のイタズラでもいいぞ。むしろ両方とか?」
さて、この小悪魔。
どうしてくれようか。
trick or treat?
trick & treat!