trick&treat

靴音を反響させながら階段を上りきり、玄関の前で立ち止まる。
時刻は零時を少し過ぎたところ。
この時間なら時任もまだ起きてるだろうが、寝ていることも考えて自分で鍵を開ける。

「ただいまー」
「おかえり、久保ちゃん」

機嫌がいいのかな。
ソファーに座ると、最近お気に入りのゲームを中断して、時任がコーヒーを淹れて渡してくれた。
日中はまだ軽装で過ごせるような陽気でも、夜にもなればさすがに冷え込んでくる。
熱いコーヒーが思いの外冷えていた体に染み渡る気がした。

「なぁ、久保ちゃん。今日ってハロウィンだろ?」
「ん?ああ、日付変わってるからね」

しなやかな両腕が首に絡みつく。
ソファーに座る久保田の足を跨ぐ様に、膝の上に時任が座り込んだ。

「時任?」

反射的に細い腰を支えた久保田を見下ろした時任が、にやりと笑う。

「血ぃ寄越せ」
「……普通は悪戯かお菓子か?って迫られるもんなんだけどね」
「じゃあ久保ちゃん寄越せ」
「俺はお菓子?」
「嫌なら俺様のイタズラでもいいぞ。むしろ両方とか?」

さて、この小悪魔。
どうしてくれようか。

trick or treat?
trick & treat!