「だって、フツーじゃつまらないだろ?」

そう言って時任は艶美な笑みを浮かべて見せた。

【Pleasant play】

熱を孕んだ呼気が空気に紛れ、緩慢に部屋に満ちていく。
未だに引かない余韻に浸りながら、久保田は汗ばみ張り付いた幾筋かの髪を掻き上げた。

「楽しそうだねー時任」
「んー、そうか?」

答える時任の口から漏れ出る吐息にも時折、甘い色が交ざる。
乱れたシーツの上で時任が身動ぐと、時任自ら久保田に縛らせた両手が目に入った。
無造作に絡げられた紐の緋が、白い手首によく映える。

「でもあんなに声出してたら、他所に聞こえちゃうかもよ?」
「いいじゃん、聞かせてやれば。何なら、もっと出してやろーか?」

意地の悪い久保田の言葉を物ともせず、そう言って悪戯っぽい笑みを浮かべる時任の唇に久保田は 軽く手を重ねた。

「やっぱだーめ。そんなの、俺が聞かせてあげるワケ無いっしょ?」

久保田の言葉に時任は目だけで笑うと、早く手を退かせとばかりに乗せられた掌をぺろりと舐めた。

「とか言って、この間窓開けっぱなしでヤりやがったのは、何処のどいつだよ」
「だって、普通じゃつまらないんでしょ?時任だって本当は開いてるってコト気付いてたくせに」

言いながら枕元に放り出してあった煙草に火を点ける。
再び目に入った手首の紐を虚血してしまわない内に解いてやろうと手を伸ばすと、時任はするりとその手を かわしてしまった。
どうやら、この遊びは相当お気に召したらしい。
そして、それは同時に『まだ続けろ』という命令に他ならない。

「……なーに笑ってんだよ」
「いや、お前と居るとホント退屈しないなーって」
「だろ?」

さあ、次は何して遊ぼうか?