誰だってあるだろ?そーいう時。

【eat me】

風呂から上がってリビングに戻ると、そこは既に蛻の殻。
寸前まで使ってたと思しきゲーム機は電源も落とさず放置されたまま、テレビから軽快な音楽を
流し続けていた。
ちょっと小首を傾げて考えてから、ゲームとテレビ両方の電源を切る。
暫く待って「どうして勝手に消すんだ!」とか文句の声が聞こえてこない事を確認してから、
久保田はリビングの電気を消した。

「時任?」

寝室のドアを開けると既に電気は消され、月明かりで辛うじて中が窺えるか、といった暗さだった。
眠っている事も考えて、静かに近付き控えめに声を掛けると時任がベッド上で身じろぎ、空気が
揺れた。

「遅っせーんだよ。待ちくたびれたっつの」
「それはごめんね」

時任の言葉の持つ意味に気付いた久保田はひっそりと笑うと、ベッドの縁にゆっくりと腰を掛け
その頬に手を伸ばす。

「触んな」

その一声に伸ばした手をぱたり、とベッドに投げ出すと。
時任の唇が満足げに弧を描き笑った。

「なに、今日はそーいう気分の日?」
「そ。今日はそーいう気分の日」

起こせ、というように伸ばされた手を掴み引き起こすと、時任はそのまま勢いよく久保田に
抱きついた。
加減を知らない時任を受け止めきれずベッドに沈み込むと、いつもとは逆の位置で楽しげに自分を
見下ろす目を見上げた。

「……お好きにどーぞ」
「じゃ、遠慮なく」

イタダキマス。