since 2005年8月12日
「いってえ……」
いつまで経っても、慣れる事の無い右手の痛み。
耐え難いほどの痛みから意識を逸らすには、それ以上の痛みを与えればいい。
反射的に左腕に爪を立て、歯を食いしばる。
大丈夫。まだ、大丈夫。
そうやって自分を騙して、誤魔化して。
波が引くように痛みが消えた頃にはまた一つ、腕に新たな傷が増えていた。
「……時任?」
「悪い、起こした?」
ベッドという、狭い空間。間近でじっと顔を見つめられ、後ろめたさに目を背ける。
「時任、腕出して」
「なんで、」
「いいから」
何時に無く強い口調に、躊躇いながら布団から腕を出す。
どうしても逃げがちになる腕を捕ると、袖を捲られた。
「で、これはなに?」
「あー……何でもねえ、っつったら怒る?」
「言ってみる?試してみる価値はあるかもね」
「……じゃぁ言わねぇ」
「そ?」
薄明かりの中。
捕らえたまま検分するように眺めて、触れていた腕が解放されて。
「イケナイコトする手は、こうだからね」
「久保ちゃんそれ反則……」
痛みと傷しか齎さない右手を、大きな両手が包み込む。
感じることの無い体温に、ただ泣きたくなった。