since 2005年8月12日
もう日がだいぶ高くなってしまっている。
ブラインドの隙間から入り込む陽光は僅かでも、人の眠りを妨げるには十分な要因だった。
一度気になってしまうと、寝直すに寝直せない。
それに久保田が起き出した時に、自分も一度は目が覚めている。
それでも程よい温もりをもった寝床は居心地がよく、秋の深まりを感じさせるような冷えた
空気の這う床に降り立つよりは、このまま惰眠を貪っていた方が利口ではないか、という気もした。
うとうとする間にも差し入る陽光は無遠慮に人を照らし続ける。
「……眩しいっつーの」
このままでは安眠する所ではない。
時任は諦めたように軽く息を付き、多少の名残惜しさを感じながらもベッドを後にした。
「久保ちゃん、後でベッドの位置変えろ」
「どしたの?そんな突然」
久保田は何の前触れもなく聞かされた時任の台詞に特に驚く事もなく、時任のコーヒーを淹れる為に
立ち上がった。
「窓から日が入ってくるんだよ。眩しくて寝られやしねえ」
「そんな時間まで寝てるからっしょ」
久保田は苦笑を浮かべながらも「他にいい置き方なんかあたっけ?」と考えを巡らせていた。
「つーか、どうせ変えるならベッドごと変えろ。もっとでっけーヤツに」
「なんでまた」
「あのベッドだと久保ちゃんが起きた時に俺も一緒に目が覚めちまうんだよ。この安眠妨害が」
一見無造作に、その実、時任の好みを完全に把握した上で砂糖とミルクを入れていた久保田の手が
止まる。
「何笑ってんだよ」
「いや別に?」
突然肩を震わせた久保田に、時任が不思議そうな目を向ける。
「時任はベッドを大きくしてまで俺と一緒に寝たいと思ってんのかなーって」
「な、ちっげーよ!俺はあの部屋にベッド2つも置いたら邪魔になると思って……!」
「はいはい」
信じてねーな!と喚く時任にコーヒーを手渡すと、久保田は時任の隣に腰をおろした。
「やっぱさ、ベッドはあのままね。位置もそのまま」
「なんで」
「これから寒くなるんだし。両方とも今のままのがこの先きっと暖かいよ?」
「……お前がそーしたいなら勝手にすりゃあいいじゃん」
「そーね」
未だに忍び笑いを続ける久保田に時任は拗ねたような眼差しを向けると、飲みやすい
温度になったコーヒーに口を付けた。