relaxation

夜空が白み始発電車が動き始めた頃。
いつもにも増して危険なバイトから帰宅した久保田はわき目も振らずにリビングに直行した。
そして、どさりという音をたてながらソファーに倒れ込み目を閉じる。

「久保ちゃん?」

物音を聞き付けたのか、時任が寝室から出て来る。
そして普段目にする事のない久保田の様子に何処か怪我でもしたのかと目を走らせたが、
どうやら疲労の色が濃いだけだと見て取った時任は安堵の溜息をついた。

「ったく、脅かすなよ。大丈夫か?」
「うん……ちょっと電池切れただけ」

漸くそれだけ答えた久保田の声は確かに弱々しく、いつも以上に覇気がない。
時任は再び溜息をつくと、ソファーに投げ出されていた腕をよけ、空いたスペースに腰を下ろした。

「だったら、さっさと充電しろ」
「うん……」

緩慢な動作で身体を横向きに変えた久保田の腕が、ゆっくりと時任の腰に回される。

「ちょ、くすぐったいって久保ちゃん」
「ごめん、ちょっとこのまま寝かせて……」

身を捩った時任の脇腹に額を寄せ、伝わる温もりがもたらす安心感に誘われるまま、
再び目を閉じる。

「お疲れ……」

完全に寝入った久保田の眠りを妨げる事なく、時任は慈しみに満ちた手付きで
ゆっくりとその頭を撫でた。