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ゲームをしている時任をリビングに残し、久保田は一人、寝室に入った。
ベッドに座り、煙草に火をつける。
幾分かして時任の足音が聞こえ、久保田はドアへと目を向けた。
ほぼ同時にドアが開く。が―

「ってぇ!」

ドアが発てた派手な音と、時任の悲鳴じみた声。
そして倒れ込むようにして入った寝室の壁に縋る姿を見れば、何が起こったのかは一目瞭然だが。

「どうしたの?」
「あし、ドアっ……!」

その言葉だけで、久保田は己の推測に間違いが無いことを悟った。
―ドアに足の小指を打付けた。

「えーと。とりあえず、ベッドまで歩ける?」

久保田の問いかけに、時任は声も無く首を振る。
事態を予測していなかったが為か、想像を絶するほどの痛みにベッドまでの数歩が
踏み出せないらしい。
久保田はやれやれ、といった面持ちで立ち上がり時任を抱き抱えると、そのままベッドに座らせた。

「どれ、ちょっと見せてね」

左足の踵を下から支え、打付けたらしい箇所を診る。

「うーん、ちょっと赤くなってるけど…血も出てないし。大丈夫そうだよ?」
「ほんとか?」
「うん。良かったね」

じっと自分を見下ろしてくる心配そうな目に、久保田は微笑んで答えた。
―嘘。ホントはちょっとだけ皮が剥けて血が滲んでる。
しかし、この構図は。

「まるで女王様と下僕の図だぁね」
「跪いて足をお舐め、ってか?」

怪我が無いことを知ったからか、涙目ながらも楽しそうに笑いながら言う時任に久保田は少し考え、
それから僅かに口角を吊り上げた。 そっと支え直した時任の足の甲に唇を寄せる。

「仰せのままに。女王サマ?」
「なっ……!」

不意に触れた唇の感触に反射的に引かれる足を捕らえ、つっと足先の方へ顔をずらし小指を食む。
舌を絡めたかと思えば柔らかく歯を立てられ、じんわりとした痛みと甘い疼きが足の先から全身へと這い上る。

「やめ、」
「やめるの?」

ギュッとシーツに食い込む指に目を留めた久保田は、捕えていた足を解放するとそのまま時任の
身体をベッドに押し倒した。

「久保ちゃんっ!」
「ちゃんとやめたっしょ?」

抗議の視線を余裕の笑みで受け流し、尚も文句を紡ごうとする唇を己のそれで塞いでしまう。
甘い吐息が漏れ出すまで、もう少し―。