since 2005年8月12日
ゲームをしている時任をリビングに残し、久保田は一人、寝室に入った。
ベッドに座り、煙草に火をつける。
幾分かして時任の足音が聞こえ、久保田はドアへと目を向けた。
ほぼ同時にドアが開く。が―
「ってぇ!」
ドアが発てた派手な音と、時任の悲鳴じみた声。
そして倒れ込むようにして入った寝室の壁に縋る姿を見れば、何が起こったのかは一目瞭然だが。
「どうしたの?」
「あし、ドアっ……!」
その言葉だけで、久保田は己の推測に間違いが無いことを悟った。
―ドアに足の小指を打付けた。
「えーと。とりあえず、ベッドまで歩ける?」
久保田の問いかけに、時任は声も無く首を振る。
事態を予測していなかったが為か、想像を絶するほどの痛みにベッドまでの数歩が
踏み出せないらしい。
久保田はやれやれ、といった面持ちで立ち上がり時任を抱き抱えると、そのままベッドに座らせた。
「どれ、ちょっと見せてね」
左足の踵を下から支え、打付けたらしい箇所を診る。
「うーん、ちょっと赤くなってるけど…血も出てないし。大丈夫そうだよ?」
「ほんとか?」
「うん。良かったね」
じっと自分を見下ろしてくる心配そうな目に、久保田は微笑んで答えた。
―嘘。ホントはちょっとだけ皮が剥けて血が滲んでる。
しかし、この構図は。
「まるで女王様と下僕の図だぁね」
「跪いて足をお舐め、ってか?」
怪我が無いことを知ったからか、涙目ながらも楽しそうに笑いながら言う時任に久保田は少し考え、
それから僅かに口角を吊り上げた。 そっと支え直した時任の足の甲に唇を寄せる。
「仰せのままに。女王サマ?」
「なっ……!」
不意に触れた唇の感触に反射的に引かれる足を捕らえ、つっと足先の方へ顔をずらし小指を食む。
舌を絡めたかと思えば柔らかく歯を立てられ、じんわりとした痛みと甘い疼きが足の先から全身へと這い上る。
「やめ、」
「やめるの?」
ギュッとシーツに食い込む指に目を留めた久保田は、捕えていた足を解放するとそのまま時任の
身体をベッドに押し倒した。
「久保ちゃんっ!」
「ちゃんとやめたっしょ?」
抗議の視線を余裕の笑みで受け流し、尚も文句を紡ごうとする唇を己のそれで塞いでしまう。
甘い吐息が漏れ出すまで、もう少し―。