like a cat

上手い具合に陽の当たるリビングの片隅で、背を丸めながら朝から点けっぱなしのテレビを
見るともなしに眺めている、一匹の猫。
恋は盲目、なんてよく言ったものだ。そんなありふれた日常の一光景にすら愛しさを感じ、
背後からそっと抱き締めてみる。

「……あちぃ」
「そう?」

暫くの沈黙の後、不機嫌さを隠そうともしない声でただ一言、そう紡がれた。
もちろん、今さらそんな事で動じる訳もなく、軽く受け流す。

「邪魔だ。どけ」
「何でよ?」
「だから、お前にそうやってくっつかれると暑いんだよ!さっきも言っただろ!」
「んー、そうだっけ?」

イライラと喚く時任に、抱き締める腕の力を緩めるどころか逆により一層の力を込め、
温かさに誘われるまま、時任の肩に顎を乗せた。
すると、時任が諦めたみたいな溜め息を一つ吐いて。

「久保ちゃんのそーいうトコ、たまにスゲーずるいよな」
「……うん」

時任の体温と、陽の温かさに、意識の半分は既に心地よい眠りの中。
最後に覚えているのは、時任の腕が伸ばされた気配と、プツッという小さな音の後に訪れた静寂。
そして、己の腕の中にある、何よりも確かな温もりだけだった。

Merry Xmas!