ゲーム

「あ、」

不意に画面に表示される、『YOU LOSE』の文字。
対する時任は喜ぶどころか、信じられない、とでも言うように画面と俺を見比べる。

「あーあ、負けちゃった」

対戦して、負けた方が食器洗い。
そんな約束をしてゲームを始めたのは、つい数分前のこと。
正直、時任に負けるなんて思ってなかったし、だからと言って手を抜いた訳でも無いのだけれど。

「久保ちゃん」
「うん?」

約束は約束だからね。
立ち上がろうとした所で時任に呼び止められる。

「……いい、俺がやる」
「何でまた」

代わりに立ち上がった時任が呆れたように溜め息を吐いて、確かめるように左手で俺の額に触れた。

「久保ちゃん、熱あるだろ」
「あー……うん、言われてみればそうかも」

道理で、今日は煙草に手が出ない訳だ。
他人事のように納得して笑ってから、触れる手の冷んやりとした心地良さに目を細めた。

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