avert（※滝時表現ありの久保時につき注意）

ああ、イライラする。
背中に当たる湿ったシーツの不快な感触もどこか他人事のように感じながら、妙に冷めた気持ちで天井を見つめていた。

バイトから帰って来た時、マンションの前で滝さんと出会した。
俺を見て何だか酷く吃驚したような顔をするから、「どうも」ってへらりと笑いかけたらぎこちない笑みを浮かべて「じゃあ、くぼっち。またね」 なんて言い残して逃げる様にさっさと立ち去って行った。
まあ、大方予想は付くけどね。
無意識にフィルターを噛み潰していた煙草を携帯灰皿に落としてから、ゆっくりと階段を上った。

「ただいま」

キッチンのシンクにコーヒーカップが二つと、俺のじゃない吸い殻の残された灰皿。
横目で確認してから寝室のドアを開ける。

「あ、久保ちゃんおかえり」

で、極め付けはコレ。
寝乱れたシーツを整える訳でもなく、適当にシャツを羽織っただけの時任に迎えられて、あー、そりゃあ滝さんじゃなくても逃げ出したくなるよね、と何処か他人事のように納得した。

そして、今。
使う前からグチャグチャに乱れたシーツの上に突き飛ばされて、艶然とした笑みを浮かべる時任に見下ろされる。

「……なに？」
「しよ？」

何かを言うよりも先に、噛みつく様なキスを寄越される。
好きにさせながら時任の後ろに指を押し込んでみれば、すぐに飲み込まれて他人が出したモノが指を伝い落ちた。