毛布

「起きるからコーヒー淹れて、って言ったの誰よ」

視線の先、ベッドの上で毛布の山がゆっくりと、規則正しく上下する。
たっぷり10回分数えて、手を伸ばす。

「時任、コーヒー入ったよ」

冷めるけど。良いの?
頭からすっぽり被った厚手の生地を捲ろうとすれば、端を掴む両手にギュッと力が込められる。

「……狸寝入り」
「本気で寝てる」
「なおタチが悪いじゃない」

返ってきた応えに思わず、そう突っ込む。
ていうか、そろそろ本当にコーヒー冷めると思うけど。

「久保ちゃん、今度アレ買って。着る毛布」
「お前がせっかく淹れたコーヒーを無駄にしないなら買ってあげるけどね」

もぞり、と山が動いて時任が渋々ベッドから抜け出して来る。
「床が冷たい」と文句をつける時任に、これはモコモコスリッパも買わされるわ、と笑った。

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