嘘(※滝時注意)

大して広くも無いベッドの上で距離を詰められた所で、枕元に放り出したままのケータイが鳴った。
二人して視線を向けた先に、表示された名前。
トッキーと目が合う。
ニヤリと笑う口元に苦笑を浮かべて、留守電になる直前に拾い上げ耳に当てる。

「はい、もしもーし」

どうしたの、くぼっち。なんて白々しく訊きながら、電話の向こうの声を拾おうと躙り寄るトッキーからケータイごと遠ざかるも狭いベッドの上。
すぐに行き詰まり無駄な努力と諦める。

「トッキー?今日は来てないけど。うん、バイトも頼んで無いし」

うん、うん、そーだね。
適当に相槌を打ちながらちょっかいを仕掛けてくるトッキーの相手をするのはちょっと辛い。
変に息が上がりかけた所で、悟られる前に「じゃあ、また」と電話を切る事に成功。
その瞬間、興味を失ったとでも言う様にあっさり俺の上から離れて「あー、滝さんが久保ちゃんに嘘吐いたー」と愉しげに笑うトッキーに思わず半目になる。

「じゃあ、何。トッキーは居るけどこれからイケナイコトするので暫く帰れません、とでも言えって?」
「言えるもんなら言ってみれば?俺は助けねーけど」

薄情にもそう言い放つトッキーに、だよねぇ、と納得。
そーいえば、自分のケータイは何処にやったの、と訊きかけて眼前に突き付けられた、俺の物じゃないケータイ画面。
ずらりと並ぶ不在着信を知らせる表示と『久保ちゃん』の羅列に背筋が凍る気がした。

twitter:#WA版文字書き60分一本勝負