特別な日

秒針がぐるりと一周して日付が変わった所で、口元に笑みを浮かべた。
時計から視線を外して、傍らの久保ちゃんを見上げる。

「どうぞ?」

恭しく差し出された久保ちゃんのケータイを取り上げて、躊躇うこと無く電源を落とし放り出す。
いつもと変わらない日常に、ほんの少しだけ変化を加える、特別な日。

これで今日は丸一日、誰にも邪魔をされる事なく久保ちゃんを独り占め出来る。

満足感に浸りながら腕から伝わる体温に寄り掛かれば、そっと頭を撫でられる心地良さに目を閉じる。

「誕生日、おめでとう」

今日はまだ、始まったばかり。

Happy Birthday!