punishment

深夜。
帰宅して真っ先に向かった寝室で、穏やかな寝息を立てるその寝姿にそっと安堵する。
ベッドの縁に腰をかけるその微かな音に釣られたかのように寝返りを打った時任が、ゆっくりと目を開ける。

「起こしちゃった?ごめんね」

ただいま。
時任のぼんやりとした視界が微笑を浮かべた久保田を捉える。
久保ちゃん、という時任の小さな声での呼びかけは、残念ながら久保田の耳には届かなかった。
身体を起こした時任のしなやかな腕が久保田に抱き着くように回されたかと思えば、しな垂れるように身体を預け、どことなく甘えるような仕種でキスを寄越したのだから。

「時任?」

いつもとは違う時任の様子に、久保田は僅かに瞠目しながらもその背に腕を回し、時任を抱きとめる。
戸惑いを隠せない久保田を余所に時任は絡めた腕をそのままに間近に迫った久保田の口唇に自分のそれを再び重ねると、自ら舌を絡ませた。
起き抜けの拙い動きが逆に久保田を煽る結果となり、時任をベッドへと押し戻そうとした、その瞬間。

「うわ、なに?」

肩を押され視界が反転する。
見下ろす筈だった時任に見下ろされ、その瞳に艶然とした笑みが浮かぶ。

「俺様を起こした罰な。ありがたく受け取れ」
「……それ、色々矛盾してない?」

時任は答えず、身を屈めたその瞬間。

「あ、そうだ」

不意に時任が思い出したかの様に顔を上げる。

「誕生日おめでと、久保ちゃん」

Happy Birthday!