七夕

時任の願いはどれも比較的叶えやすいものばかりだ。
例えば、「これが食べたい」とか「これがやりたい」とか。
目的が分かりやすくて、手段も容易い。
だから大概のものは叶えてやりたくもなるし、それは今日の七夕という日でも変わらない。

「大体、一年に一回だけ会える日なんだろ?そんな日くらい、そっとしておいてやれっての」

ファーストフード店の片隅に設えられたプラスチック製の笹と吊り下げられた色とりどりの短冊に、時任が顔を顰める。

「まあ、昔からの風習なんだから仕方ないんでない?」

確かに、一年に一回だけ会える日に他人の願い事なんて聞いてる暇は無さそうだけど。

「そーいう時任は?何か無いの?」

願い事。
そう首を傾げ訊ねてみれば。

「俺?もう叶ってんじゃん。久保ちゃんと今日この新商品を食いに来る事」

満足気に笑う時任に、俺の願いも満たされた。

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