室内の篭るような空気を入れ替えたくて、ベッド脇の窓を開けた。
昼間の熱を僅かに残した外の空気は、それでも涼しさを感じるには十分で、煙草に火をつけるよりもそのまま外の空気に触れていたくて横になり目を閉じる。

「久保ちゃん、風呂空いた……って、寝てんの?」
「……おかえり。起きてたよ」

うそ、本当はちょっとだけうとうとしてたけど。

「ふーん……」

ギシッとスプリングが軋んだ音を立てる。
その音に閉じかけてた目を無理矢理開けると、やけに楽しげな笑みを浮かべる時任と目が合った。

「なんだよ、眠いんじゃねーの」
「いや、何かここで寝たら勿体無いような気がして」
「例えば?」
「たとえば、そうだなー……」

わざとらしく首を傾げて、少しばかり考えるフリ。

「時任にキス、されちゃうんじゃないかなーとか?」

ベッドに乗り上げた時任との距離が不意に縮まる。
頭の上で、窓を閉める音が聞こえた。

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