確信犯(※滝時注意)

(うーわー)

シャワーは家で浴びて来たから、と自ら服を脱ぎ落したトッキーの肌を見て思わず絶句した。
そこら中に残された、鬱血痕。
これだけの物を残されればシャワー浴びた時に流石に気付くだろうから、これはわざとだ。
にしても、いつもにも増して凄くない?
なんか、くぼっちからの無言の圧力?(当て付けかもしれない)を感じるんだけど。
それに乗るトッキーもトッキーだし、分かっていながら乗せられる俺も俺なんだけど。

「……なに?」
「んー?なーんでも」

人の気を知ってか知らずか、人のベッドを我が物顔で独占し艶然と笑みを浮かべるその身体を試しに押してみる。
抵抗なくあっさりと横たえられた事に気を良くして色濃く残る情交の痕を指と唇でなぞれば、簡単に上がる息と声に束の間の満足感。

「いいね、色っぽくて」
「ヘンタイ」

途切れがちな呼吸の合間に蔑むように吐かれた台詞は素直に乱れる態度に反して可愛くない。

「なあ、」
「ん?」

無数に残された痕の一つ一つに触れる度に違う表情を見せるトッキーの、数時間前にはくぼっちを見ていたであろう瞳が俺を映す。

「いつまで久保ちゃんの真似してんの」

そう、挑発的な眼差しを向けられて「じゃあ、どうされたいの?」なんて訊く程馬鹿でも無ければ訊かなきゃ分からない程の浅い関係でも無い。
身体を起こして視線を下にずらすのに合わせてゆっくりと足を広げ右足が俺の腰にかけられる。
本当、トッキーはこういう誘い方が上手いよな。
妙な所で感心していると、そのまま腰を撫でられて思わず息を飲む。
目が合うと愉しげに唇を歪められて、こっちも負けじと絡げられた足の行き着く先に指を突っ込んだ、その瞬間。

「あ、」

声を上げたのはトッキーじゃなくて、俺の方。
指先から掌に伝う、どろりとした覚えのある感触。
勿論、俺のじゃなくて、くぼっちの。
無言でトッキーを見下ろした。
してやったり、とばかりににやりと笑うその表情の向こうに見えたのは、くぼっちの圧力でも無ければ当て付けでもない。ただの嫌がらせ。

「……やられた」

ガックリと力が抜けて、そのままベッドに倒れ込んだ。