since 2005年8月12日
「滝さんさあ、好きな人とか居ねーの?」
その言葉に、カップを持ち上げようとした手がピタリと止まる。
無邪気な顔をして残酷な事を訊くね。
「んー、居なくもないよ」
目の前に。
なんて言葉はコーヒーと一緒に飲み込んだ。
「へえ。どんな人?」
興味津々、といった面持ちで身を乗り出してくるその姿に苦笑い。
「強いて言えば君みたいな人かなー」
「分っかんねーよ」
自分から訊いておきながら、早くも興味を失ったように「そう言えば昨日久保ちゃんが、」と話し始めるその楽し気な表情を見ながら、
「まあ、絶対に手には入らないんだけどね」
呟いた声は店内の喧騒に掻き消された。
お題元:3つの恋のお題ったー