since 2005年8月12日
見るともなしに眺めていた車外の景色。
慣れ親しんだ景色から離れていく光景に、あれ、と首を傾げる。
「送ってくれるんじゃなかったんですか?」
「送っているだろう?今夜の宿に」
「はあ、」
時刻はもう深夜と言っても差し支えない時間。
こんな時間まで付き合わされた挙句に帰して貰えないと分かれば、自分で無くとも溜息を吐きたくなるだろう。
隠す気はさらさら無いが明らさまに嫌だと表情に出てしまったのか「正直だな」と苦笑を向けられる。
「そんなに家まで送って欲しければ送らせるが」
「どうせ明日でしょ?」
「君も分かってきたじゃないか」
横暴だとか理不尽だとか、そんな悪態めいた言葉が浮かんでは消える。
「諦めたって言うんじゃないんですかね」
もう、眠れるなら何でもいい。面倒くさい。
半ば自棄になりながら、束の間の休息に目を閉じた。