もっと俺に構えよ

見るとも無しにただ眺めるテレビは面白くも何ともない。
煙草を吸い終えた所で、時任の左手を取った。
ちらりと横目で見ただけで、大人しく身体ごと預けてくる時任に気を良くして、その手にクリームを馴染ませる。
最初の内こそ「ベタベタすんのがイヤ」と嫌がっていたが、構わずしつこく続けた甲斐あって(諦めただけかもしれない)今では文句も言わず、されるがままだ。

「なあ、」
「うん?」

今日もしっとりスベスベ。
完璧。さすが俺。
手荒れどころか傷一つさえ無い綺麗な左手に満足した所で、時任に見上げられる。

「もっと俺に構えよ」
「構ってるじゃない」
「やだ。もっと」
「うーん……」

これ以上無いってくらい期待に満ちた眼差しを向けられ、ほんの少しだけ考えるフリ。

「思い付くの、一つしか無いんだけど?」
「上等」

たぶん、それが正解。

お題元:診断メーカー『3つの恋のお題ったー』