since 2005年8月12日
酷く不快な夢を見た。
未だバニラの香りが纏わり付いている気がして、爪を立て全身を搔き毟りたい衝動に駆られる。
「久保ちゃん」
「あー……起こしちゃった?ゴメン」
外は雨。
夜明けの薄明かりの中、時任は答えず静かに見据えられる。
「何つー顔してんだよ」
「……そんな酷い顔してる?」
「してる」
不意に時任の左手が額に触れた。
そのまま撫でられる心地良さに目を閉じる。
「どうせまたしょーもない事考えてんだろ」
時任の声が遠い。
うつらうつらと夢に引き摺られる。
思い起こされる、甘い残り香。
「おい!」
「っ!なに?」
殴られたのは枕元。
流石に夢の名残りも断ち切られる。
「誰、見てんの」
今度こそ、怒った声。
視線を逸らす事さえ、許されない。
「ときと、」
「黙れ」
忘れさせて。