夜になって降り出した雨が次第に激しさを増していく。
窓は水滴に曇り外の景色は疎か自分の表情さえ窺い知ることは出来ない。
俺は今、どんな顔をしているのだろう。

【paralyze】(※真治注意)

「どうした?浮かない顔をしている様だが」
「いえ、そんな事は」

自分の事など一切気にも留めないのに、こんな時ばかり見透かした様な言葉を掛けてくる。
抱いていながら名前さえ呼んでは貰えないのに、ベッドの中の温もりも相まって勘違いをしてしまいそうになる。

「先にシャワーでも浴びて来ればいい」

温もりが、離れる。
その瞬間、咄嗟に真田の腕を掴み引き止めてしまった自分に驚く。

「すみません。失礼致しました」
「君は何も期待しないのだね。本当に彼にそっくりだよ」

おずおずと手を離す治の態度に、真田は愉しげに笑った。
その瞳で、自分の向こうに誰を見ているのか。

「じゃあ、一つだけ」

期待してみても、良いのだろうか?
自分は彼とは違うと、気付いて貰える事を。

「もう一度、抱いて下さい」

どうせ叶いはしないのだから、今だけは。
再び与えられた温もりに縋り付き、目を閉じた。