cafe space

適当に選んで買ったファッション雑誌を片手に入ったカフェスペース。
店員に勧められる新作か、普段から飲み慣れている物かでちょっと悩む。

「カフェラテで」
「かしこまりました。お連れ様は?」

お連れ様?
店員の言葉に顔を上げ、笑顔を向ける方に視線を向ける。

「あ、同じので」

目が合った相手に驚き過ぎて声も出ない。
手にした自分の財布を開く間も無く、さっさと二人分の代金を支払い、受け取りカウンターへと押しやられる。

「ちょっと、何でここに居るの?」
「久保ちゃんと待ち合わせ。本屋で時間潰してたらたまたまアンタ見付けたからさ」

アンタじゃなく私にはアンナという名前があるんですけど?
思いがけず奢られる形となってしまった手前、口には出さない。
笑顔を崩さず、驚いただろ、と笑う時任に頷くに留める。

「久保ちゃんだったら絶対に新作買ってるぜ?あの生クリームすげーやつ」

結局、雑誌よりもよっぽど面白い物を見付けてしまった。
お役ご免となってしまった雑誌を、そっとバッグに仕舞い込んだ。