sweet sweets

「ンだよ、コレ……」
「何って、セブンの新商品だけど?」

そう、確かに俺が今「手に持ってるのは」セブンの新商品だ。
が。

「そうじゃなくて!何でカボチャばっかなのか、って聞いてんの!!」

そう言って時任は、テーブルに置かれたビニール袋の山をビッと指差した。
セブンはもちろん、一体何処まで行ってきたんだか、この辺にはない筈の コンビニまで。
帰りが遅かったのはバイトの所為ではなく、コレだったのか、と妙に納得して袋の中身を
覗いて見れば、パンプキン・パイやらケーキやらプリンやらが雑然と詰め込まれていた。
それも、ご丁寧に全て二つずつ。

「いいじゃない、この時期しか無いんだからさ」

来年も同じのを食べられるとは限らないでしょー?
と煙草に火を点けながら、然も当たり前の事の様に言う久保田に、軽く脱力してしまう。
まったく、新商品に掛ける情熱(?)には呆れを通り越して、感心すら覚えるが問題は
ソコではない。

「コレを俺にも食えってか?」

見ているだけで胸焼けを起こしそうになる洋菓子を視界から遠ざけつつ、
まさか、今すぐ食え、とか言わねーよな?賞味期限ギリギリ、とかもねーよな!?と
半ば祈る様な気持ちで久保田を見つめた。

「時任……」
「な、なんだよ?」

何を言われるのかと、思わず身構えれば。

「trick or treat ?」
「え、トリック……何だって?」

慣れない言葉に、首を傾げて聞き返せば。

「トリック、ね。時任、イタズラ決定ー」
「は?……って、ちょっと待てー!」
「だーめ。待たない」

これ以上ないって位の笑顔で勢い良くソファーに押し倒されて、でも優しいキスを
唇に落とされた。

「……何でこーなるんだよ」
「お前が何でカボチャばっかなのか、って聞いたからでしょ?これからゆっくり教えてあげる」

―カラダにね?
耳元で低く囁かれる声に、無駄な抵抗は諦めて。

「分かるように教えろよ?」
「善処しまーす」

甘美なハロウィンの夜は更けていく―

trick or treat ?
お菓子をくれなきゃ、イタズラするぞ。
お菓子をくれても、イタズラするけどね?