背中

「久保ちゃん」
「んー?」
「重くねえ?」
「重い訳無いっしょ。もう少し太ってもいい位よ?」

後ろからお腹に回した腕にほんの少しだけ力を込める。
ぎゅっ、と抱きしめながら引き寄せると逆らわず時任が凭れてきた。
心地良い重み。
さらりと流れるような黒髪に触れたくて、でも生憎抱きしめた両腕は塞がっているから、頬で触れて確かめる。

「擽ってぇよ」

身を僅かに捩らせながらも笑って逃げる素振りは見せない時任に気を良くしながら。
背中から伝わる温もりに目を閉じた。