柚子

新しいもの、珍しいもの。 最初は何でも、二人で一緒に。

「おーすげー!」

炭酸ガス2倍。寒い冬に温浴効果が高まります。
そんな謳い文句に上手く乗せられて買って来た入浴剤。
時任がはしゃぐ度に黄色の水面が波打ち揺らぐ。

「なー久保ちゃん!これ良いよな!」
「うん、そうね」
「久保ちゃん、反応薄い」

時任が不満気に水面を指先で弾いた、その瞬間。

「あ、」
「うわ、ゴメン!目に入った!?」
「柚子。だったんだなーと」

匂いがね。
そう言うと時任が湯船に沈む勢いでガックリと項垂れる。

「今さらかよ……」
「うん。まあ、それどころじゃ無いって言うか何て言うか」

ここで手を出したらもう一緒に入ってくれなくなるんだろうなと。