fragile

「あっ!」

付けっ放しのテレビを見るとも無しに眺めていたら突然、キッチンから時任の短い悲鳴と陶器が割れる重い音が響いた。

「わり、手が滑った」
「いや、そんな事は良いんだけど。大丈夫?」

見た所、割れたのは来客用のコーヒーカップが一つ。
時任が怪我をした様子は無い。

あー、コレさっき葛西さんに出したヤツだ。

葛西さんさえ来なければ俺がこのカップを出す事も無ければ時任がこんな危険な目に遭う事も無かったのに、 と本人が聞いたら憤慨するであろう言葉を『責任』の名のもとに並べ立てる。

「あーあ、ついに最後の一つまで割っちまったな」
「また買いに行けば良いじゃない」

今日の天気は生憎の雨。
肩を落とす時任に微笑みかけ、遠くのテレビから微かに聞こえる明日の天気予報に耳を傾けた。