fascination

最近嵌っているらしいゲームも早々に切り上げて、珍しく日付けを跨ぐよりも随分前に「寝る」と言い残して時任は寝室に入って行った。
音の消えたリビングはやはり何処か静かで落ち着かない。
時刻は0時過ぎ。
未だ眠くはないが慣れ親しんだ温もりを腕に抱き込めば微睡む事が出来るだろうか。
それとも「暑い」と蹴り出されるだろうか。

まあ、蹴り出された所で放す気も無いのだけれど。

知らず口許に笑みが浮かぶ。
誤魔化すようにリビングの電気を消した。

静かに寝室のドアを開けるとオレンジ色の薄明かりが目に入った。
真っ暗でないと寝付けないのに珍しい。
首を傾げベッドに近付くと不意に時任が身体を起こした。

「あれ、寝てたんじゃないの?」
「んー、寝てたけど。さっき起きた」

つーか久保ちゃん来んの遅い。
そう、ぼやきながら目を擦る手を止めさせる。

「やめなさいって。赤くなるよ?」

時任の隣りに座って、暗がりの中目を覗き込めば不意に首元に抱きつかれ面食らう。

「うわ、なに?」
「誕生日。おめでとう久保ちゃん」

そういえば、日付けが変わって今日は俺の誕生日だった。
誕生日なんて気にも留めてなかったけど。

「プレゼントは俺な。喜べ」
「えーっと」

色々と突然過ぎて思考がついていかない。
これは、つまり、そういう事か。

「していいの?」
「いらないなら寝るけど」

どうする?
そう訊きながら、答えを分かってるその目はきっと愉しげに笑ってる。

「そりゃあ、もちろん欲しいけど」

一度離した身体をしっかりと抱き直す。

「もうちょっとこのまま、ね?」

Happy Birthday!