since 2005年8月12日
気怠い腕を持ち上げて窓を開けた。 肌を撫でる生温い夜風と、遠く微かに響く風鈴の音が心地良い。 うとうとと微睡むと、ふわりと嗅ぎ慣れたセッタの匂い。 「久保ちゃん、」 「んー?」 遠くない夏の気配に、数年前の記憶がふと蘇る。 「また花火やろうぜ。前みたいに」 「ベランダで?大家に怒られるって言ったの、お前じゃない」 共犯。 浮かんだ言葉は声にならず。 ゆっくりと髪を梳く指先の感覚に誘われるまま、目を閉じた。