初夏

気怠い腕を持ち上げて窓を開けた。
肌を撫でる生温い夜風と、遠く微かに響く風鈴の音が心地良い。
うとうとと微睡むと、ふわりと嗅ぎ慣れたセッタの匂い。

「久保ちゃん、」
「んー?」

遠くない夏の気配に、数年前の記憶がふと蘇る。

「また花火やろうぜ。前みたいに」
「ベランダで?大家に怒られるって言ったの、お前じゃない」

共犯。
浮かんだ言葉は声にならず。
ゆっくりと髪を梳く指先の感覚に誘われるまま、目を閉じた。