substitute

「触んな」

寝乱れた髪を梳いてやろうと伸ばした手はにべも無く跳ね除けられた。

「相変わらずつれないなー」

そんな態度は今に始まった事では無いが、これが本当につい先刻まで同じベッドで快楽を共にしていた相手かと思うと、その変容ぶりに訳が分からなくなる。

「だから、」
「はいはい、くぼっち以外に触らせたく無いんだろ?分かってますって」

いつになるかは知らないけど、という言葉は煙草に火を付ける事で腹の奥底に飲み込む。

「先にシャワー浴びて来たら?」

下から見上げる不機嫌な眼差しから逃れる為にそう促がした。
思いの外素直に浴室へと向かうその後ろ姿を追いながら、どさり、とベッドに倒れ込む。

「あーあ」

煙草の灰を気にしながら、片手間に湿ったシーツを撫でる。

最初は、ただの好奇心。
流された、とでも言えば言い訳位にはなるが彼に全く好意が無いと言えば嘘になる。
いくら身体を重ねた所で所詮、自分は久保田の代わりにすらなれないのだ。

それならば。

「さっさと抱けばいいのに」